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「あれ?領収書に貼る印紙がない・・・」 ちゃんと入れてきたはずなのに、いくらファイルを探しても見つからない 仕舞いにはカバンを逆さにしてブンブンと大袈裟に振るが出てこない 銀髪のクモでない時の自分は、どうしてか 何時もぼんやりしているというか 間が抜けているというか・・・ 少々そんな所に嫌気も差し大きなため息を一つ 自己嫌悪に陥り、俯く視線の先に人影 目を上げると、黒髪のお仲間 この時間だから、お仲間というより会社の同僚 自分の周りに散らかるカバンの中身と、手にした領収書をチラッと見て 抱えていた自分のフォルダをゴソゴソと探る 「金額幾らだよ?」 自分にしか聞こえないような低い声でボソリと呟く 「えっ?えっ?」 質問の意図も瞬時に汲み取れなかった自分に苛立ったのか、手から領収書をひったくる つっと目を通し、あっという間に領収書に印紙を貼り、印紙の納品書を営業部宛で発行する それを投げて寄越し、「じゃあな」と一声かけて自分のデスクに戻っていく フト考えてみると、最近こうやってさり気なく助けてくれる事が多い というか、良く自分の困り事が分かるものだ感心する 「感心してちゃ、ダメなんだけどね」 と力なく笑って、彼女の功で部長の苦言を聞かずに外回りに出られることに感謝する 夜、卑し楽し時間の始まり 身体の動きも頭の回転も、やはり段違い つくづく自分が闇の住人なんだと思う 会社勤めも別に楽しくないわけじゃあない だけど、自分がいるところは、定位置は、ソコじゃない 「あぁ、楽しい・・・今日も何だかテンション上がっちゃったな♪」 その瞬間、左腕を焼ける様な熱さが貫く キロリと顔を向けると、血塗れで肩で息をつく殺したはずの男 「あれぇ?始末しそこなっちゃったんだ、僕ってば」 とおどけつつも瞳の奥の残忍さは隠しきれない 「窮鼠猫を噛むってヤツ〜?噛まれたら・・・噛み返さないとね」 変幻自在の刃を手元に集約させる が、自慢の非情な銀の糸を使用する間もなく、男は崩れ落ちた 目の前から滑り落ちた男の後ろには、舌打をしながら冷たい目を投げて寄越す女 「油断してんじゃねぇーよ、バァーカ」 「マンティス。。。よく分かったね、僕が反撃されてるって♪」 ふむ、と流血を見る腕と交互にヘルプの女を見ながら訊ねる 「ふん、殺気のある所マンティスさん在りだろうが」 蜘蛛から志賀へと戻り、痛みが急に腕に宿る クルクルと慣れた手つきで包帯を巻く女を見ながら感嘆の声を上げる 「めぐみさんって、女の子らしい事もできるんですね〜」 いつもなら噛み付いてくるはずの彼女は苦々しい顔をしたまま作業を続ける 「それにしても、最近助けてもらってばっかりだなぁ〜」 ここまで言ってハッとする、彼女への報酬は身体で返すか、懐を散々痛める豪遊かだから どちらとも、消費するものが激しすぎる 慌てて、話を次へと移さなければ、私生活にも会社勤めにも支障をきたす 「えと、ホントめぐみさんって優秀ですよね〜もしかして天才??」 そんなみえみえのお世辞を吐いてしまい、さすがに気まずい雰囲気 「さっきから、うるせぇーよ」 といつもに比べ幾分そっけなく返しながら、今巻いたばかりの患部を上からパシッと叩く 「いたっっ!」 痛みに軽く涙目になりながら、帰って行く彼女を見送る 「また助けてもらったなぁ〜、まぁ傷は小夜子さんに治してもらった方が早いんだけどね」 包帯を巻かれた自分の腕を眺めながら呟く 風もなく、月も見えない夜道を独り自宅へと歩く 「どーせ、明日にゃデコに治してもらって綺麗さっぱり消えてんだろーが」 ぐっと唇を噛んで前を向く 先ほどの蜘蛛の台詞が頭をよぎる 『・・・優秀で天才・・・』 ふぅと溜息をつき、その勢いで少し大袈裟な深呼吸 「・・・割と色んなシーンでお前の事考えてるなんて口が裂けても言えねーよ」 完全な独り言、掻き消すようにびゅおうと風が吹く 見上げると、隠れていた月が顔を出し始めている 軽く伸びをして、駆け出した 『明日のことは、また明日考えるさ』 |