|
ぱぁん 乾いた音が部屋に響く ぱぁん もう一度、響く 痛い・・・そう思う。口の中に広がる錆味。切れたな、こりゃ 蜘蛛のヤツ、後が残ったらただじゃおかねぇからな。あっ、明日の朝礼の当番アタシかぁ ぼんやり、意識の向こう側から思う 目を上げると、純朴そうな黒髪のでかい図体。無表情に振り下ろされる大きな掌 馬乗りにされ、腕はヤツの膝で固定されている。動きは取れない なにせ、殺し屋の中でもNo.1の実力の持ち主だ かくいう自分もNo.2だと思ってはいる。殺傷能力は引けはとらないと自負しているが、単純にウエイト勝負で分があるとは思わない。 自分はオンナでヤツはオトコだ。あぁ〜ぐるぐる考えても意味ねぇな 「っっ!」 ひゅんとカカトで地面を蹴って、自分の上のオトコの後頭に蹴りを当てにいく 足の先には鋭い鎌がギラリと鈍い光をたたえている ザワリ オトコの雰囲気が変わる。ザラ付くような殺気が身をまとい、その中で 純朴そうな黒髪は消え失せ 残虐極まりない銀髪の蜘蛛が現れる 鎌の行く先など見てもいないのに、必要最低限。 顔に残忍な笑みを貼り付けたままコトリと首を倒しただけで、鎌をよける その様子を見ただけで、アタシの体は滾(たぎ)る。 殺意と媚と性欲のギラ付く目でヤツの赤い目を突き刺すように睨んでやる あぁ、アタシは欲深けぇなぁ〜 「欲深い」と思う、ヤツに対して色んな『欲』を持つ これが愛なら・・・血生ぐせぇ愛があったもんだ だから、認めない アタシは本能の赴くままに生きてる、生きてきた、そして生きていく *** 「もぉ〜、めぐみさん。何で毎度毎度イキナリなんですか」 そんなヤツにスッキリしたいい笑顔をくれてやりながら答える 「溜まってたからに決まってるだろうが♪」 何となく、納得いかない風なヤツをちらりと見やると、ブツブツ言いながら着替えをしている 「それに、いきなり殴れなんて、驚きましたよ」 押しの弱そうな顔に苦笑と困惑を浮かべながら、言い募っている 「けっ、2〜3発殴れって言っただけで、マウントポジションから顔面殴打しやがったくせに、シレっと何言いやがる!!こんの暴力至上主義者が!」 口端を押さえながら、言ってやると顔色をくるくる変えながらワタワタしている 「デコっぱちが言いやがったんだよ『蟷螂さんて・・・Mじゃないんですか』ってな〜。このアタシにだ!ヨリにもよってこのア・タ・シにぃ!!!」 「気にいらねぇヤツぁ殺る!ボコル!!気に入って姦ッたヤツももちろん顔面ペロリの血みどろFuckだっ!それがこの蟷・螂・サ・マだ!!!!!!」 そこまで一気にまくし立てて肩で息を付きながらギロリとヤツを見れば、緑茶を淹れて、コッチにも勧めている。目が合い、ボヤとした表情で笑う 「お互い、卑しいですね〜」 「けっ!」 ヤツが淹れた茶を半ば奪い取るような格好で受け取る。一口すすると先刻切れた口端がピリッと沁みた 「そんでまぁ、殴らせてはみたものの、やっぱ殺意が無いだけ、良かぁねぇわな〜。これでMじゃねぇってことが証明されたもんだけどよ」 「痛ぇだけだったぜ、顔殴りやぁが・・・」 曖昧に笑いながら近づいてきた顔に文句を塞がれ、飲み込まれた 口端が・・・ピリピリする 「舐めると、治りが早いですよ」 離れていく顔を唖然と見やり、スグに正気に戻る 人がいい顔に柔和な笑みを浮かべるヤツに回し蹴りを一発入れて 「っっ!おらっ!行くぞ!死織のヘルプだ」 慌てて追ってくる気配を背中で捉えつつ、ヤツの前を歩きながら思う 『好きじゃねぇよ・・・欲だ単なる・・・』 |