『残響@』



「はぁ!?何でアタシなんだよっ!蜘蛛の落札(おと)した仕事だろ」


噛み付くように大きなデスクに身を乗り出して不満をぶつけるも、その幼い組織のTOPは涼しげな眼元を崩すでもなく肘を突き組んだ両手にちょこんと顎を乗せたまま答える


「蜘蛛は今日別件で出てもらっていてね、依頼者との打ち合わせに間に合いそうもない。初見の時にヘルプとして君も行ってるんだから、依頼者の顔と大まかな事情を知っている。適任だろ?マンティス」


確かにそうだ、初顔合わせの時にアタシも付いて行った。





待ち合わせ場所にいたのは、アタシよりも少し若い普通の女だった。胸で切り替えのついたサラリとした生地のワンピースに白いカーディガンを着ていた。街を見回せば似たような女はごまんと見つかるような至って普通の女



話はこうだ、昔からストーカーに悩まされていたらしい。

それこそ就学前からだそうだから、どんだけ長いんだって話だが

それが、5年前ほどから付き合う人間に危害を加えるようになった

このストーカーを直接見たことはないらしいが、いつも纏わりつくような視線を感じ、何度引っ越しても携帯を変えても必ず手紙やメール、不審な届けモノが送られてくるという

それだけなら、通常警察に届けるだろうが、1年ほど前から話が凶悪化してきたらしい


交際相手が殺されたのだ、それもかなり残虐な方法で

詳しい話はその時聞いてないが、駆け付けた時には辺りは血の海、それはそれは凄惨を極める現場だったそうだ



その後も、親友、職場の先輩、親しかった美容師、近くに住む一人暮らしの妹

連続して同じ手口で近しい人間が5人も殺された


もちろん、警察には届けたらしいが何の進展も見せない上に、次々と殺人は起こり1年間であっという間に5人被害にあったということだ



そうして、恐怖に慄きつつも、この理不尽さに憎しみの炎を灯してしまった末、アタシ達職業、殺し屋。に復讐を依頼した





落札(おと)したのは蜘蛛、こういう慈善事業のような仕事を選ぶのはヤツの得意技だ

ターゲットが絞れていない分、犯人捜しに人手が必要だからアタシがヘルプに呼ばれた




待ち合わせ場所に現れたアタシ達を見て、若干驚いた顔になり緊張からか、ごくりと喉が鳴る。少し掠れた声で「職業、殺し屋。さんです・・・か?」と聞く


問いに口角を上げて蜘蛛が肯定を返すと、堰を切ったようには話し始めた

瞳に涙をためながら事の顛末を語り、肩を震わせるも眼にはもう後戻りができない道を選んでしまった者特有の暗い光を灯していた



そのまま下唇をかんで俯いてしまった依頼人に、蜘蛛が「大丈夫、なんとかするから」とか何とか偽善者丸出しの声をかけていた。うざいったらなかった

「ね、マンティス」


(しらねーよ、ってか、しらなくはねーな、仕事なんだし何とかするのは当然だろ、それで金もらってんだぜ、馬鹿じゃねーのか?)

そんな思いを振り払うように「ああ」と短く答える



そんなやりとりに安心したのかふわりと花が綻ぶような笑顔を浮かべる様(さま)に
嫌な予感が湧き起こり、それが心にさざ波を立てる



夜街の明かりのせいではないだろう、頬を若干染めてアタシ達の前で「よろしくお願いします」と頭を下げ蜘蛛とアタシを見る


そして少しの間蜘蛛の顔を見て、慌ててもう一度頭を下げ帰って行った。



それが3日前の初回だ、なんでこんなにも詳しく観察してるのか嫌になる



嫌になる理由も分かっているし、この依頼人に逢うのに何故苛つくのかも見当がつく
見当がつくからまた余計に嫌なのだ




「糞っ糞、糞糞糞、くっそ〜〜〜〜」




頭をかきむしらんばかりの勢いで叫び、幼いくせに有無を言わせない我らがTOPの命に従い、ブツブツと蜘蛛に対する罵詈雑言を口にしつつ依頼人との待ち合わせ場所へと向かった











−アトガキという名の反省文−
新しいお話のスタートです
ねつ造話は毎度のことです、お気になさらず(笑)
再び続き物に挑戦ですが、長い目で生温かく応援してくださいませ

ブラウザバックでお帰り下さい

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